経済産業省のリスキリング施策を徹底解説!概要やメリット・注意点・事例も紹介

人材育成 2023.12.06

こんにちは。「TECH PLAY ACADEMY」ライターチームです。

近年、世界的にリスキリングが重視されています。
日本でも経済産業省を中心に、さまざまな施策がスタートしています。

この記事ではリスキリングの概要やメリット、注意点、事例の他、経済産業省の行っているリスキリングに関連した施策についても紹介します。
リスキリングについて詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。

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経済産業省の提唱するリスキリングとは

経済産業省によると、リスキリングは下記のように定義されています。


新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること

引用:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―|経済産業省

近年では、DX化のための新たなスキルの習得や、仕事の進め方が大幅に変わると予測されている職業につくためのスキル習得を指すケースが一般的です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いて、生活やビジネスが変容することで、顧客起点の価値創出のための事業やビジネスモデルの変革を行うことを指します。

リカレント教育との違い

リスキリングに似た用語として、「リカレント教育」という言葉があります。
リカレント教育では、「働く→学ぶ→働く」のサイクルを繰り返し、基本的に「職を離れて」新しいことを学びます。

一方、リスキリングは現在の職場で働きながら、必要なスキルを習得することを指し、仕事上で価値創造し続けるために、必要なスキルを学ぶ点が特徴です。

OJTとの違い

リスキリングと似た言葉として、他にも「OJT」という言葉があります。
OJTとは、「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」を意味する言葉で、今ある社内の仕事を継続しながらスキルを習得する、連続系の能力開発のことです。

リスキリングはOJTと違い、今できる人材がいない仕事のためのスキルを獲得する、非連続系の能力開発を指します。

経済産業省がリスキリングを重視する理由

経済産業省がリスキリングを重視する理由の1つに、DXを推進できる人材が日本では不足しているという現状が挙げられます。

近年は、オンラインでの事業活動やテレワークなど、コロナ禍による働き方の変化に適応したスキルがさらに求められているものの、需要に供給が追いついていない状態です。

特定の専門スキルが必要な仕事は、徐々にAI(人工知能)に移行しています。
一方で、AIの仕組みの設計や収集データの分析など、人間にしか行えない仕事に関するスキルは、人間自身が身に付けなければなりません。

リスキリングを実施することで、デジタル技術の力を駆使する力や、価値創造に必要なスキルなどが得られると期待されています。

DXに必要な人材・スキルをまとめた「デジタルスキル標準(DSS)」

2022年12月21日、経済産業省とIPAから「デジタルスキル標準(DSS)」が策定されました。

「デジタルスキル標準(DSS)」とは、DX推進における企業の人材の確保・育成の指針を指します。
「DSS」は

  • DXリテラシー標準(DSS-L)
  • DX推進スキル標準(DSS-P)

の2種類からなります。

経済産業省によると、「DXリテラシー標準(DSS-L)」は全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準を指し、「DX推進スキル標準(DSS-P)」はDXを推進する人材の役割や習得すべきスキルの標準を指します。

参考:デジタルスキル標準(DSS)策定の背景・目的 |  経済産業省

経済産業省の実施するリスキリングの施策

前述のとおり、日本では経済産業省が中心的な役割となって、企業のリスキリングを推進しています。

それでは、経済産業省は、具体的にはどのようなリスキリングの施策を推進しているのでしょうか。
ここでは、経済産業省が実施するリスキリング施策のうち、代表的な5つを解説します。

1. デジタル時代の人材政策に関する検討会

「デジタル時代の人材政策に関する検討会」とは、2021年2月より経済産業省が実施しているセミナーです。
DXを推進する担い手として、新たな時代に即したデジタル人材政策の方向性について検討を行っています。

例えば、2022年12月に開催された第7回検討会では、個人の学習や企業の人材育成・採用の指針である、「デジタルスキル標準(DSS)」ver.1.0を取りまとめました。
今後はユーザーのフィードバックをもとに、デジタルスキル標準の継続的な見直しを行う予定です。

※参考:デジタル時代の人材政策に関する検討会|経済産業省

2. マナビDX

「マナビDX」とは、自宅にいながらDX化に対応できる、新しい知識やスキルの習得を支援する施策です。
2020年に「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」としてスタートし、2022年に「マナビDX」に移行しました。

デジタルに関連する知識やスキルを習得できるポータルサイトとなっており、基礎的な内容から実践的な内容まで網羅しています。

一部有料の講座もありますが、受講費用の補助が受けられるため、リスキリングにコストをかける余裕がない企業でも、DX化に関する学習が可能です。

※参考:マナビDX|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

3.リスキル講座(第四次産業革命スキル習得講座認定制度)

「リスキル講座(第四次産業革命スキル習得講座認定制度)」は、経済産業大臣が認定する専門的・実践的な教育訓練講座です。

IT・データを中心とした、将来の成長が強く見込まれる雇用創出に貢献する分野において、社会人がキャリアアップを図ることが、この講座の目的です。

2022年10月1日時点で117講座が認定・提供されており、従業員の能力再開発をしたい企業と、スキルアップしたい個人の両者が活用できます。

※参考:第四次産業革命スキル習得講座認定制度|経済産業省

4.九州半導体人材育成等コンソーシアム

2022年3月に設立した「九州半導体人材育成等コンソーシアム」は、九州全体の産業界・教育機関・行政機関等(42機関)で連携しながら、人材の育成と確保に向けて取り組んでいます。

この施策を始めたのは、2021年11月世界最大手の半導体製造会社である「TSMC(台湾積体電路製造股份有限公司)」です。

TSMCが熊本県に半導体工場を建設すると発表したことを受け、「シリコンアイランド九州」の復活に向けた施策の1つとして、この施策が打ち出されました。

※参考:「九州半導体人材育成等コンソーシアム」の概要|経済産業省 九州経済産業局

※参考:シリコンアイランド九州の復活に向けて|経済産業省 九州経済産業局

5.高等教育機関における共同講座創造支援補助事業

「高等教育機関における共同講座創造支援補助事業」は、2021年に実施が決定された、高度専門スキルを保有する人材の育成を目的とした事業です。

例えば、企業が高等教育機関で共同講座などを設置した場合に、当該費用の1/2、上限3,000万円の補助が受けられます。

高等教育機関で、企業の求める人材を育成するために必要な環境の整備が可能です。この施策は、産業界のニーズに即した人材育成の加速化にもつながります。

※参考:経済産業省の取組|経済産業省

リスキリングのメリット

リスキリングには、さまざまなメリットがあります。ここでは主な2つのメリットを解説します。

人材不足解消が期待できる

日本ではそもそもIT人材が不足しています。DX推進を目的としたハイレベルな人材を確保するとなると、さらに状況は深刻です。

しかし、内部の人材にリスキリングを実施し、必要なスキルを身に付けてもらえれば、DX化にともなうIT人材不足の問題が解消できます。

リスキリングを進めれば、市場の変化や仕組みの転換のたびに、新しいスキルを持つ人材を確保する必要もありません。

業務効率化が期待できる

リスキリングで従業員のスキルを再開発し、知識やスキルを獲得できれば、業務効率化につながります。例えば、DXを取り入れて業務フローの改善を行えば、コストや残業時間の削減が可能です。

また、ビッグデータの分析方法について熟知している人材が育てば、コスト削減や労働環境の改善だけでなく、企業利益の向上にもつながるでしょう。

リスキリングの取り組み事例

国内外のさまざまな企業でリスキリングの取り組みが進められています。ここでは、具体的な事例を解説します。

Amazon.com, Inc

2025年までに、Amazonではアメリカの従業員10万人を対象にしたリスキリングが決定しています。これは企業にとって従業員1人あたり約75万円の投資となる、大きな取り組みです。

例えば、非技術系人材を技術職に移行させる「アマゾン・テクニカル・アカデミー」や、IT系エンジニアがAIなどの高度スキルを獲得する「マシン・ラーニング・ユニバーシティ」などがあります。

※参考:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―|経済産業省

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所では、国内グループ全従業員約16万人のDX基礎教育を実施しています。例えば、「デジタルリテラシーエクササイズ」という、e-ラーニング形式のリスキリングでは、従業員にデジタルに関する基礎知識を身に付けさせることが可能です。

1講座あたり30分から2時間程度の研修で、日立グループのデジタル事業を理解できます。

※参考:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―|経済産業省

富士通株式会社

富士通株式会社では2020年度の経営方針において、内部強化としてのリスキリングを重要課題として宣言しています。具体的には、5年間で5,000~6,000億円の投資を発表し、人材への投資を企業全体で積極的に進めています。

また、連結子会社の株式会社富士通ラーニングメディアでは、社外向けにDX分野のリスキリングに関するコースを開設し、デジタル人材の育成に注力している点も特徴です。

※参考:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―|経済産業省

リスキリングを行う際の注意点

効果的なリスキリングの実施には、いくつか注意すべき点があります。ここでは、リスキリングで特に注意したい3つの点を解説します。

目的を明確にして実施する

リスキリングの対象となる人材のモチベーションを維持するためにも、まずリスキリングの目的の明確化が大切です。
例えば、リスキリングが今後どのような仕事につながるか、キャリアにどう影響するかなどの認識を共有しておきましょう。

リスキリングの対象となる従業員は、業務上の負担が増加します。
リスキリングのメリットを従業員が理解し、納得して取り組めるようにすることが大切です。

企業全体で取り組む

リスキリングは従業員が個々で行っても、大きな成果は期待できません。
企業全体で、従業員の能力の再開発につなげることが大切です。具体的には、企業内でリスキリングの認知度を高め、従業員の学習に従業員が協力する体制が必要になります。

インセンティブの付与や定期的な発表会などの実施も、企業全体でリスキリングを進める上で効果的です。

企業に適したコンテンツを活用する

リスキリングを実施する際には、企業の展望や課題などに適したコンテンツを使用しながら、取り組みを実施することが大切です。

自社に合わない内容のコンテンツを使用すると、リスキリングが非効率的になったり、思ったような効果が得られなかったりします。

リスキリングで使用するコンテンツを内製化する場合には、同業他社の導入事例を参考にしてみましょう。

リスキリングを成功させるポイント

リスキリングを成功させるには、どのようなポイントを押さえればよいのでしょうか。
ここでは最後に、特に大切な2つのポイントを解説します。

全人材を対象に考える

リスキリングは、一部のデジタル人材の獲得や、育成のために行われると思われがちです。
しかし実際には、フロントラインを含む全人材に対して有効な取り組みと考えられています。

前述のとおり、リスキリングで成果を上げるには、個々の従業員に対して行うだけでは不十分です。全人材に対して行うことで、組織全体の能力の再開発につながります。

リスキリングは外部発注するのも有り

リスキリングに使用するコンテンツは、必ずしも内製化する必要はなく、外部発注することも可能です。
高い専門性が求められるデジタル関連のスキルは特に、外部のコンテンツを使用した方が費用や時間の節約になるケースが多くあります。

リスキリングで使用するコンテンツを外部発注する際には、自社の事業展開や課題、今後の市場の変化などを明らかにすることが重要です。

まとめ

近年、経済産業省を中心に、日本企業でもリスキリングが推進されています。
しかし、企業のDX化に関わるIT分野は高い専門性が必要になるため、状況に応じて外部発注する方が効率的に施策を進められるケースも多くあります。

パーソルイノベーションが提供する「TECH PLAY Academy」では、企業にあわせたオーダーメイドの研修で、リスキリングを支援しています。
未経験からでも3ヶ月で即戦力を目指せる「ITエンジニア研修」と、DXリーダーを育成する「DX人材研修」の2つを提供。どちらも企業の目的に合わせた完全オーダーメイドでの研修提供し実務での成果につなげます。
また、DXの第一線で活躍する業界著名人に研修を担当してもらうことも可能です。
外部研修を活用したリスキリングに興味のある方は、下記よりぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

TECH PLAY BUSINESS

パーソルイノベーション株式会社が運営するTECH PLAY。約23万人※のテクノロジー人材を会員にもつITイベント情報サービスの運営、テクノロジー関連イベントの企画立案、法人向けDX人材・エンジニア育成支援サービスです。テクノロジー人材のエンパワーメントと企業のDX化の成功をサポートします。※2023年5月時点

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