IT人材の育成で活用すべきスキルマップとは?ITSSの概要と人材育成への活用方法
こんにちは。「TECH PLAY ACADEMY」ライターチームです。
昨今、DX化の流れから、IT人材の社内育成に力を入れる企業が増えています。社内育成において、IT人材として必要なスキルを学んでもらうためには、スキルマップの活用が効果的です。IT人材のスキルマップ作成には、ITSS(ITスキル標準)が参考になります。
この記事では、IT人材の育成に取り組む企業向けに、スキルマップとITSSについて解説します。IT人材の社内育成に取り組む際には、ぜひ参考にしてください。
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目次
IT人材の育成・活用に役立つスキルマップとは
スキルマップとは、業務に必要となるスキルを、それぞれの従業員がどのくらい身につけているのか一覧にしたものです。従業員が今持っているスキルが把握できるほか、それぞれ不足しているスキルが可視化されます。
スキルマップでは、スキルごとに〇や×、レベルなどを記載しておくことが一般的です。
IT人材の育成・活用にスキルマップを作成するメリット
スキルマップが多くの企業で活用されている理由は、そのメリットにあります。効果的に活用できれば、人材育成だけでなく、人材マネジメントなどにも役立ちます。
【スキルマップを作成するメリット】
・効率的な育成が実現できる
・的確な人材配置など、人材マネジメントに役立つ
・評価基準を明確にし、モチベーションアップにつながる
IT人材のスキルマップ作成で基準となる ITSSとは
ITSS(ITスキル標準)とは、経済産業省が策定したIT人材の育成や採用の参考となるスキル体系のことです。IT関連のサービス提供に必要なスキルが明確化されており、業務を満足に遂行できる「実務能力」の基準となります。
IT人材の育成に取り組む企業で、スキルマップの作成や教育カリキュラムの計画を立てる際には、ITSSが参考になります。
ITSSが策定された目的
世界的なIT産業の急成長に伴い、多くの企業で高度なスキルを持つIT人材の必要性が高まっています。しかし、IT人材の需要が高くなるのに反して、国内の人材が不足しており、日本企業ではIT人材の確保が困難な状態となっています。
IT産業の発展を目指す日本では、IT人材の育成が課題の1つとして挙げられており、人材育成に役立つスキル標準としてITSSが策定されました。
ITSS以外でIT人材育成に活用できるスキル標準
ITSS以外にも、ITスキルに関連するスキル標準が存在します。必要に応じて活用するとよいでしょう。
【ITスキル関連のスキル標準例】
・UISS(情報システムユーザースキル標準)
・ETSS(組込みスキル標準)
・CCSF(共通キャリア・スキルフレームワーク)
ITSSにおける7段階のレベル評価
ITSSでは、スキルのレベルを7段階に分けて評価します。以下では、それぞれのレベルがどの程度のスキルを表しているのかについて解説します。
エントリーレベル:レベル1~2
エントリーレベルと呼ばれるレベル1~2は、ITプロフェッショナルを目指す入口となります。これから基礎的なIT関連のスキルや知識を身に付けていくレベルです。各レベルの評価は以下の通りです。
・レベル1:IT人材としての最低限の知識やスキルを持っている状態。積極的なスキル開発が求められる
・レベル2:上位レベルからの指導を受けながらであれば、作業のすべてもしくは一部を担当できる状態。ITプロフェッショナルになるために積極的なスキル開発が求められる
ミドルレベル:レベル3~4
上位レベルの指導がなくても、独力で業務ができるのがミドルレベルです。各レベルの評価は以下の通りです。
・レベル3:基礎だけでなく、応用的な知識・スキルも持つ状態
・レベル4:スキルの専門分野を確立した状態。独力で業務の課題の発見や解決ができ、ハイレベルなIT人材として認められる状態
いずれのレベルも、スキル開発は継続して必要とされます。
ハイレベル:レベル5~7
ハイレベルは、より高いレベルのIT人材として認められるレベルです。各レベルの評価については、以下の通りです。
・レベル5:IT人材として社内をリードできる
・レベル6:社内外においてハイエンドなIT人材として認められる
・レベル7:新たな価値の開発にも貢献できる、世界で通用する
ITSSで分類される11の職種とスキル項目
ITSSでは、IT人材が携わる職種として11つが例に挙げられており、それぞれにスキル項目が設けられています。
ここからは、11の職種ごとにスキル項目と必要とされるレベルについて解説します。
1.マーケティング
マーケティングは、市場の動きや顧客のニーズを分析・予測し、販売戦略を企画・実行する職種です。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・マーケティングマネジメント:レベル5~7
・販売チャネル:レベル4~6
・マーケットコミュニケーション:レベル3~6
2.セールス
顧客の要望に応じて最適な提案ができ、信頼関係も築きながら製品・サービスの成約につなげるのが、セールスの仕事です。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・訪問型コンサルティングセールス:レベル3~7
・訪問型製品セールス:レベル3~6
・メディア利用型セールス:レベル3~5
3.コンサルタント
コンサルタントは、顧客のビジネスビジョンに応じてアドバイスや提言する職種です。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・インダストリ:レベル4~7
・ビジネスファンクション:レベル4~7
4.ITアーキテクト
ITアーキテクトは、顧客のビジネス戦略を支援するために、質の高いITアーキテクチャを設計する職種です。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・アプリケーションアーキテクチャ:レベル4~7
・インテグレーションアーキテクチャ:レベル4~7
・インフラストラクチャアーキテクチャ:レベル4~7
5.プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントは、プロジェクトを提案、計画、実行し、その成果に対して責任のある立場の職種です。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・システム開発:レベル3~7
・ITアウトソーシング:レベル6~7
・ネットワークサービス:レベル4~6
・ソフトウエア製品開発:レベル3~7
6.ITスペシャリスト
ITスペシャリストは、ハードウエアやソフトウエアに関する専門的な知識とスキルを持ち、システムの開発・運用・保守に関わる職種です。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・プラットフォーム:レベル3~6
・ネットワーク:レベル3~6
・データベース:レベル3~6
・アプリケーション共通基盤:レベル3~6
・システム管理:レベル3~6
・セキュリティ:レベル3~6
7.アプリケーションスペシャリスト
アプリケーションスペシャリストは、アプリケーションの設計・開発・導入・テスト・保守を担当する職種です。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・業務システム:レベル3~6
・業務パッケージ:レベル3~6
8.ソフトウェアデベロップメント
ソフトウェアデベロップメントは、ソフトウエア製品の企画・設計・開発を実施する職種です。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・基本ソフト:レベル3~6
・ミドルソフト:レベル3~6
・応用ソフト:レベル3~6
9.カスタマーサービス
カスタマーサービスは、ハードウエア、ソフトウエアの修理、カスタマイズ、導入支援を実施する職種です。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・ハードウエア:レベル3~5
・ソフトウエア:レベル3~5
・ファシリティマネジメント:レベル3~6
10.ITサービスマネジメント
ITサービスマネジメントは、システム運用の専門的なスキルを活用し、サービスレベルの維持、向上を目指します。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・運用管理:レベル3~7
・システム管理:レベル3~6
・オペレーション:レベル3~4
・サービスデスク:レベル3~4
11.エデュケーション
エデュケーションは、IT人材育成のために研修カリキュラムを考え、運用・評価まで担当する職種です。ITSSでは、以下の専門分野のスキルが必要とされています。
・研修企画:レベル4~6
・インストラクション:レベル3~6
ITSSに対応した情報処理技術者試験
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する情報処理技術者試験は、試験ごとにITSSのレベルに紐づけられています。対応しているレベルは、以下の通りです。
・レベル1:ITパスポート試験
・レベル2:基本情報技術者試験
・レベル3:応用情報技術者試験
・レベル4:高度試験
IT人材の育成では、育成する人材のレベルに応じて、資格取得を支援することも効果的です。また、資格取得に応じて報酬がでる制度などを整備すると、モチベーション向上に役立ちます。
IT人材の新たな需要に向けた「ITSS+」とは
ITSS+は、第4次産業革命に向けて策定された新しいスキル標準です。これからIT人材として知識やスキルを身に付ける際に役立つITSSとは異なり、すでに活躍しているIT人材のスキル強化や学び直しに役立ちます。
ITSSで策定されている領域に加えて、さらに以下の4つの領域でのスキルやタスクが追加されていることが特徴です。
・データサイエンス領域
・アジャイル領域
・IoTソリューション領域
・セキュリティ領域
IT人材の育成と同時に役立てたい「DSS」とは
IT人材を育成するにあたって、企業全体のDX推進を必要としている企業も多くあります。そこで、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2022年6月に「デジタルスキル標準(DSS)」を公表しました。
DSSは、「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の2つで構成されており、企業全体のDXに対する意識向上に必要な知識や、DX推進に関する専門性のある知識やスキルが標準化されています。
ITSSやITSS+を活用したIT人材の育成と同時に、DSSを活用して社内全体のデジタルスキル向上を図る企業も多くあります。
ITSSを企業に取り入れるポイント
ITSS自体は、単なるスキル指標に過ぎないため、活用する際には目的を明確にしておくことが重要です。人材育成が目的なら、「ITSSを基にスキルマップを作成し、従業員の能力を把握・不足スキルの明確化に役立てる」など、具体的な目的を定めたうえで活用しましょう。
ITSSを活用した人材育成は一時的なものにならないように、スキルマップを作成し、随時更新しながら継続的に運用していくと効果的です。
IT人材育成に効果的なITSSとスキルマップの活用方法
IT人材の育成では、経営戦略に基づいた育成計画を立てる必要があります。ITSSやスキルマップで必要なスキルが把握できても、育成方針が定まっていないと効果につながりません。
ITSSでは、標準化された「研修ロードマップ」も作成されているため、スキルマップ作成と併せて育成計画の参考にするとよいでしょう。
まとめ
企業の人材育成で活用されているスキルマップは、IT人材の育成においても欠かせません。専門的な知識やスキルが必要とされるIT人材の育成には、スキル標準であるITSSを基にしたスキルマップが役立ちます。育成を成功させるためにも、ぜひ、スキルマップを活用してください。
また、IT人材の育成には、研修や外部セミナーの実施によるリスキリングも大切です。TECH PLAY BUSINESSでは、IT人材の育成に役立つ研修サービスを提供しています。企業に合わせて完全なオーダーメイドで研修提供が可能で、業界のプロフェッショナルが研修担当をするなど、高いスキルの取得に役立ちます。
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