リスキリングの概要や導入手順|DX時代で推進される理由やメリットも解説

人材育成 2023.11.24

こんにちは。「TECH PLAY ACADEMY」ライターチームです。

データとデジタル技術を活用して企業を変革し、市場で自社の優位性を保つための取り組みを意味するDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されており、必要なDX人材を確保しにくくなる懸念が予想されています。

リスキリングは、DX人材を確保する上でも世界的な注目を集めています。この記事では、リスキリングのメリットや導入の手順などを解説しています。ぜひ参考にしてください。

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リスキリングとは

リスキリングとは、従業員に職業能力の再開発を進めることです。
具体的には、将来的に業務上で必要になる新しい知識・スキルを従業員に学ばせる体制や環境を整備することが挙げられます。今後必要になる知識・スキルを従業員に習得させることで、企業はビジネスモデルの変化や新たな技術の開発に対応できるようになります。

リスキリングが世界から注目される理由とは

リスキリングは世界的に注目を集めています。2020年に開催されたダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)では、リスキリング革命を主要な議題として取り上げました。
また、第4次産業革命に伴って加速するDXに対応するためには、DX人材の確保が不可欠です。DX人材を育成する上で、リスキリングは重要な位置付けがなされています。2022年10月には岸田文雄内閣総理大臣が、リスキリングのための支援制度を盛り込んだ総合政策を表明しました。新型コロナウイルス感染症の流行を機に働き方が多様化し、既存の知識・スキルだけでは事業を継続していけなくなることも出てきています。

※参考:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―|経済産業省
※参考:岸田内閣総理大臣記者会見|内閣官房内閣広報室

リスキリングと類似している概念との違い

リスキリングを理解する上では、類似する概念との違いを知ることも大切です。
リカレント教育とアンラーニングとの違いを解説します。

リカレント教育との違い

リカレントとは、「循環する」や「繰り返す」という意味があります。
リカレント教育は、求められる知識・スキルが出てきたタイミングで教育を受ける、習得後に就業に復帰するといったサイクルを回す仕組みをいいます。新しいスキルを習得するという工程は、どちらも同じです。
ただし、リスキリングは就業しながら教育を受けるのに対し、リカレント教育は就労を離れて教育のみに集中する「学び直し」を指します。

アンラーニングとの違い

アンラーニングとは、「学習棄却」と訳される言葉です。既存の知識・スキルを捨てて、新たなスタイルを取り入れることを意味します。新しい知識やスキルを取り入れることはリスキリングと共通していますが、アンラーニングは不要になった既存の知識・スキルは捨て去り、新しい知識・スキルを上書きすることを主眼としています。

企業がリスキリングを推進して得られる6つのメリット

リスキリングを推進することで、企業はいくつかのメリットが得られます。主なメリットは、以下の6つが挙げられます。

メリット1. 人材不足の解消につながる

社会的なDX化の推進により、DX人材の不足が予測されています。経済産業省の「IT人材育成の状況等について」によると、2030年にはDX人材が約40~80万人不足すると予想されています。DX人材の獲得競争の激しさは増し、社外から必要数の人材を確保することは難しくなるでしょう。
既存の従業員に対しリスキリングを実施すれば、採用活動にかかるコストの削減はもちろん、DX人材不足の解消につながります。

※参考:参考資料(IT人材育成の状況等について|経済産業省

メリット2. 従業員エンゲージメントが向上する

企業がリスキリングを推進することで、従業員は効率的に業務をこなせるようになり、労働時間の短縮も期待できます。また、従業員満足度の向上にもつながります。
エンゲージメントが高まることで、生産性や業績の向上といった副次的な効果も見込めるでしょう。

メリット3. 組織内で自律的な風潮の変化が期待できる

リスキリングをきっかけに、「新しいスキルを習得したい」と考える従業員が増えやすくなります。新しい知識やスキルが身に付けば、対応できる業務内容を増やすことにもつながり、従業員の成長を促してくれます。
組織内で自律的な人材が増えると「自分も挑戦してみよう」と、自発的にスキルアップを目指す輪が広がり、組織の風潮によい変化をもたらしてくれるでしょう。

メリット4. 新たなスキルをスムーズに業務に活かせる

リスキリングで身に付けたスキルは、既存の業務にも活かせます。社外からスキルを備えた人材を採用する場合、業務の進め方や企業ルールなどを教育する必要があり、実務をこなせるようになるまでに時間がかかってしまいます。
既存の従業員にリスキリングを行った場合、業務の流れや社内文化を把握しているため、習得したスキルをスムーズに業務に活かすことができるでしょう。

メリット5.アイデアの創出につながる

リスキリングによって身に付けた知識やスキルは、新しいアイデアを生み出すことにつながります。新しい知識やスキルを習得すると従来にはなかった考え方や発想が生まれ、新事業や商品・サービスの開発に活かせるでしょう。
アイデアを創出し続けることは、時代の変化に対応して市場での優位性を保つためにも重要です。

メリット6.業務効率化につながる

リスキリングで得られた知識やスキルは、既存の業務をスムーズにこなすだけでなく業務効率化にも有効です。業務効率化を実現できれば、新事業の推進に必要な準備や業務に労力を割くことができます。また、業務効率化によって残業時間を短縮できれば、残業代の削減も実現できるでしょう。

企業がリスキリングを行う方法

リスキリングを実際に行う際はどのような手順で進めればよいのでしょうか。
具体的な手順を解説します。

手順1. リスキリングに関する戦略を立てる

リスキリングを行う上で、まず戦略を立案することが重要です。
戦略を立てずに行えば、リスキリングに失敗する可能性が高まります。自社の経営戦略に沿って、必要な人材像や求められるスキルなどを洗い出し、リスキリングの目的も明確にしましょう。
戦略は、業績や事業内容などの根拠があるデータを用いて立てるようにします。

手順2. 教育方法の選定

戦略の立案後は、どのように教育を進めるのか具体的な方法を選定します。
主な教育方法は、研修やオンライン講座、社会人大学、eラーニングなどです。特定の学習方法だけでなく、幅広い方法を用意しておけば、従業員はそれぞれに合った方法を選ぶことができます。
教育方法は、自社の業務内容や働き方に合っているものを選定しましょう。

手順3. リスキリングを実施する

教育方法の決定後は、リスキリングの対象者を決定します。対象者は企業が一方的に決めるのではなく、従業員からヒアリングしたキャリアに対する考えも考慮して選定しましょう。
リスキリングの準備が整ったら対象者に丁寧な説明をし、立てた戦略をもとに実施します。
ただし、就業時間外にリスキリングを行うと、従業員のモチベーションを低下させる恐れがあります。そのため、リスキリングは就業時間内に実することもおすすめです。

手順4.知識やスキルを業務に活用する

リスキリングの目的は、習得させた知識やスキルを業務に活かすことです。そのため、知識やスキルを習得しただけで終わらせるのではなく、実践できる環境を与えるようにします。
さらに、実践後は結果に対するフィードバックを行います。実践・フィードバック・改善を回していき、得たスキルを磨き続けられる仕組みを用意しましょう。

リスキリングを成功させるために気を付けるポイント

リスキリングを成功させるためには、以下に挙げるポイントに気を付けましょう。

1. 企業全体でリスキリングに対する理解を深める

上述のとおり、リスキリング研修は就業時間内に行うことが多いため、社内で理解を得ておくことが不可欠です。
対象外の従業員や経営層も含めた全員がリスキリングの理解を深めることで、社内での協力体制を構築しやすくなります。
チームや部署、企業全体が、対象の従業員に新しい知識やスキルを習得させるという認識を持ち、業務上で協力を得られる体制を作っておきましょう。

2. リスキリングを強制しない

対象の従業員に新しいスキルの習得を強制してしまうと、負荷やストレスがかかるためリスキリングを成功させにくくなります。
対象者の選定に挙手制を取り入れ、自発的に取り組める従業員を選ぶことが大切です。
また、新しいスキルを習得した従業員にインセンティブを与えたり、同じ目標を持つチームを作って取り組ませたりするのも1つの方法です。

3. 自社にマッチするリスキリング方法を導入する

質の高いコンテンツを用いれば、自社の課題を解消できるとは限りません。
課題を解決するために新しい知識やスキルを従業員に習得させるなら、自社に合うリスキリングの教育方法を選ぶ必要があります。
どのような方法を選定すればよいのかを判断する際に悩む場合は、人材育成の専門家に相談することをおすすめします。

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4. 学んだ内容を活かす場を提供する

リスキリングの研修を導入した場合、業務にて学んだ内容を活かす場を提供することも重要です。
学んだ内容を実践し続けることで従業員のスキルアップを実現することができ、企業全体のDX化にもつながります。
階層や目的毎に最適な学習機会を提供し、事業と従業員双方の成長につなげましょう。

リスキリングの導入に成功している企業事例

リスキリングの具体的なイメージを得る上で、他社の成功事例が参考になります。
3つの事例を紹介します。

【事例1】日立製作所

日立製作所は、2019年に株式会社日立アカデミーを設立しました。アカデミーでは国内グループの全従業員を対象に、DXに関する基礎知識の習得に取り組んでいます。実際に行われている内容は、DX推進における課題を理解するための「DXを推進する人財育成」や、DX推進に必要なマインドセットを含む「DXリテラシー研修」などです。

【事例2】富士通

富士通では、自社のDX定義に基づいた価値を創出することを目的に、リスキリングを推進しています。具体的には、マーケット分析やDX構想策定力、デザイン思考を学ぶための座学などに取り組んでいます。富士通が実施しているリスキリングの特徴は、実際のDXプロジェクトに活かせる実践的なコンテンツを用意している点です。

【事例3】AT&T

AT&Tは、アメリカに本社を置く大手通信会社です。2013年に全従業員10万人を対象に、リスキリングを実施したことで知られています。リスキリングの結果、社内技術職の80%以上を社内の人材のみで確保できるようになっています。対象外の従業員に比べて、リスキリングに参加した従業員は昇進率が対象外の従業員よりも1.7倍に向上しました。さらに、対象外の従業員よりも離職率が1.6倍に低減したという効果がありました。

まとめ

リスキリングは時代やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識・スキルを学ぶ取り組みを指します。DXの推進によりDX人材を確保することが難しくなってきているため、リスキリングを行って自社の成長につなげましょう。

パーソルイノベーションが運営する「TECH PLAY BUSINESS」では、法人の採用・育成・組織設計といったデジタル人材の人事課題を解決するための支援をしています。

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この記事を書いた人

TECH PLAY BUSINESS

パーソルイノベーション株式会社が運営するTECH PLAY。約23万人※のテクノロジー人材を会員にもつITイベント情報サービスの運営、テクノロジー関連イベントの企画立案、法人向けDX人材・エンジニア育成支援サービスです。テクノロジー人材のエンパワーメントと企業のDX化の成功をサポートします。※2023年5月時点

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