リスキリングに使える支援とは?人材育成に活用できる助成金を解説
こんにちは。「TECH PLAY ACADEMY」ライターチームです。
近年、ビッグデータやAIに関連するスキルが業界の垣根を超えて重要視されるなか、ITスキルのリスキリングを試みる企業が増えています。企業が従業員に対してリスキリングに取り組む際は、公的な機関から助成金の支援が受けられる場合があります。
この記事ではリスキリングの定義やリスキリングが広まっている背景、リスキリングの助成金支援を解説します。エンジニアやDX人材の育成施策を検討される際はぜひ参考にしてください。
▶エンジニア / DX人材のリスキリングに役立つ資料を無料でダウンロードいただけます
目次
リスキリングの定義
リスキリングとはそもそも何を意味するのでしょうか。用語の定義を解説します。
リスキリングとは何か?
リスキリング(Reskilling)とは、仕事の進め方を大幅に変えるスキルを習得することです。
岸田文雄首相は2022年10月に開催された「日経リスキリングサミット」で、リスキリングへの公的支援を現行の3年で4,000億円から5年で1兆円に拡充すると発表しました。大きな時代の変化のなかで、人への投資の重要性を訴え、国を挙げたリスキリング強力が進められています。国の政策を踏まえ、リスキリングを取り入れる企業も増えています。
※参考:岸田首相の「日経リスキリングサミット」での発言要旨|日本経済新聞
リスキリングと類似した概念の違い
リスキリングと似た概念に「リカレント教育」と「アンラーニング」があります。それぞれの違いを解説します。
リスキリングとリカレント教育・アンラーニングの違い
リカレント教育とアンラーニングは、リスキリングと似た概念です。しかし、厳密にいうとそれぞれの概念は異なります。
リカレント教育とは、仕事から離れて従業員が自主的に大学や専門学校などの教育機関で別のスキルを学んだ後、また仕事に復帰することです。仕事と並行しながら実施するか否かが、リスキリングとは異なります。
アンラーニングとは、すでにある仕事の信念やルーティンをいったん捨て、新しいスタイルを取り入れることです。リスキリングとは、知識やスキルを取捨選択するか否かが異なります。
リスキリングが注目される背景
なぜ近年、リスキリングが注目を集めているのでしょうか。背景を解説します。
リスキリングが注目される背景
DX推進によってリスキリングの必要性が増していることが、背景の1つとしてあげられます。
DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)のことで、デジタル技術を効果的に活用し、ビジネスや組織の競争力の優位性を保つことを指します。
現状、日本ではデジタル人材不足が大きな課題となっています。経済産業省のデータによると、2030年には最大で約79万人ものIT人材が不足するといわれており、リスキリングによるデジタルスキルの獲得や、DX推進が急務です。
リスキリング実施のメリット
リスキリングを実施すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で主なメリットを2つ解説します。
業務効率の向上
従業員が新たなスキルを身につけることで、業務効率を改善できる場合があります。リスキリングによってIT技術を活用できれば、雑務の負担が軽減でき、コア業務への注力につながります。新たな人材雇用や残業コストを削減できる点もメリットです。
新事業につながる
リスキリングを通して、新しいスキルや物の見方を身につけられれば、新規事業やアイデアが生まれやすくなります。自律型人材を育成できることで、既存の事業のマンネリ化を抑制し、革新的な組織に変わるきっかけにできます。
リスキリング実施のポイント
リスキリングを実施する際には、どのような点に注意するとよいのでしょうか。特に大切な2つのポイントを解説します。
従業員の自発性を重んじる
新たなスキルを効果的に習得するためには、従業員の積極性が必要です。本人にスキルを身につけたい意志がないと、負担やストレスになりかねません。従業員のモチベーションが維持できるよう、インセンティブを設定するのも1つの方法です。
リスキリングの環境を整える
リスキリングに取り組みやすい職場環境を醸成するには、リスキリングのための時間を業務時間内に設けられるよう、制度や環境を整備することが大切です。リスキリングのメリットを従業員全体に周知することで、従業員の理解が得られやすくなるでしょう。
リスキリングの手順
どのような手順で、企業としてリスキリングを導入できるのでしょうか。リスキリング導入の手順を解説します。
リスキリングの研修実施
企業の事業戦略に基づいて、必要なスキルを洗い出します。リスキリングの目的や目標設定の際には、業績や事業内容のデータなどを参考にしてください。従業員のスキルが可視化できたら、スキル獲得につながるリスキリング研修や教育を実施します。教育プログラムや教育コンテンツは、希望する運用方法や予算に合わせて準備しましょう。
実践と改善を繰り返す
リスキリングでは、実践と改善を繰り返すことが大切です。習得した知識を実際に現場で活かすことで、従業員はリスキリングの効果を実感できます。スキルは実践して終わりではなく、実践の結果や研修に対するフィードバックの機会をもつことも重要です。繰り返しスキルを磨き続けられるよう、実践と改善を重ねましょう。
リスキリングのための支援
リスキリングに活用できる支援が、国や地方自治体を中心に広がりつつあります。以下で概要を解説します。
リスキリングで受けられる助成金
リスキリングにはさまざまなメリットがあります。一方で、企業側にとっては人材教育に費用がかかる点が懸念されています。人材投資を加速させるため、国からの提案を元に助成金の制度ができています。
制度のなかには、従業員のスキルアップに利用できる助成金もあります。うまく利用できれば、費用を抑えながらリスキリングの実現が可能です。本記事でも以下で助成金を紹介しますが、詳細はそれぞれの解説文に入れている厚生労働省や東京都のWebサイトも、あわせて確認してください。
人材開発支援助成金
厚生労働省では、人材育成に取り組む事業主に対する支援策として、人材開発支援助成金制度を創設しました。制度は全9コースです。
以下では、デジタル人材・高度人材を育成するための、「人への投資促進コース」について解説します。
厚生労働省「人材開発支援助成金」
人材開発支援助成金(人への投資促進コース)とは、一定の要件を満たした事業者や労働者が、以下の訓練を実施した際、訓練にかかった経費や訓練期間中の賃金の一部などに関する助成が受けられる制度です。訓練内容や実施目的に応じた下記のメニューがあります。
- デジタル/成長分野:高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練
- IT分野未経験:情報技術分野認定実習併用職業訓練
- サブスクリプション:定額制訓練
- 自発的能力開発:自発的職業能力開発訓練
- 教育訓練休暇:長期教育訓練休暇等制度
対象者は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 雇用保険の適用事業所であり、訓練実施期間中に対象従業員が被保険者
- 事業内職業能力開発計画と年間職業能力開発計画を作成し、計画内容を労働者に周知
- 職業能力開発推進者を選任
- 訓練計画届または制度導入・適用計画届提出日の前日から6か月前の日から支給申請提出日までの期間に、雇用する被保険者を事業主都合により離職させていない
- 従業員に職業訓練期間中も、賃金を適正に支払っている
- 不正受給による不支給措置期間ではない など
訓練メニューに応じて、以下の助成を受けることができます。
訓練メニュー | 対象者 | 経費助成率(1人当たり) | 賃金助成額(1人1時間当たり) | OJT実施助成額(1人1訓練当たり・定額) |
高度デジタル人材訓練 | 正規/非正規 | 中小企業:75%大企業:60% | 中小企業:960円大企業:480円 | - |
成長分野等人材訓練 | 正規/非正規 | 中小企業/大企業:75% | 国内大学院:960円 | - |
情報技術分野認定実習併用職業訓練 | 正規 | 中小企業:60%(+15%)大企業:45%(+15%) | 中小企業:760円(+200円)大企業:380円(+100円) | 中小企業:20万円(+5万円)大企業:11万円(+3万円) |
長期教育訓練休暇等制度(30日連続休暇取得) | 正規/非正規 | 中小企業/大企業:制度導入経費20万円(+4万円) | 中小企業/大企業:1日当たり6,000円(+1,200円) | - |
長期教育訓練休暇等制度(所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除制度) | 正規/非正規 | 中小企業/大企業:制度導入経費20万円(+4万円) | - | - |
自発的職業能力開発訓練 | 正規/非正規 | 中小企業/大企業:45%(+15%) | - | - |
定額制訓練 | 正規/非正規 | 中小企業:60%(+15%)大企業:45%(+15%) | - | - |
※参考:人材開発支援助成金(人への投資促進コース)労働者の知識・技能の向上にご活用ください|厚生労働省
DXリスキリング助成金
DXリスキリング助成金とは、東京都が打ち出しているリスキリング支援の1つです。助成金の概要について、以下で詳しく解説します。
東京都「DXリスキリング助成金」
DXリスキリング助成金とは、東京都内の中小企業などが従業員に対し、民間の教育機関が提供するDX関連の職業訓練の経費を助成する制度です。例えば専門的な知識や技能の習得・向上、資格取得などのために従業員を派遣したり、eラーニングを利用したりする際、かかった経費を助成します。
DXリスキリング助成金を受けられる対象者や申請要件、対象経費、助成額は以下の表のとおりです。
助成金対象の受講者 |
中小企業が雇用する従業員常時勤務する事業所の所在地が都内である者※在宅勤務中や自宅待機の場合は在宅場所を問わない訓練時間の8割以上を出席した者 |
助成金を申請できる要件 |
都内に本社か事業所(支店・営業所など)の登記がある訓練に要する経費を従業員に負担させていない助成を受ける訓練について、国や地方公共団体から助成を受けていない など |
助成金の対象となる経費 |
受講料(税抜価格が助成対象経費)1講座あたりの対象期間や受講料が定められている単講座教科書代や教材費eラーニング実施のID登録料や管理料 |
助成額 |
助成対象経費の3分の2上限額は64万円申請は1事業者につき1回のみ |
※参考:令和4年度DXリスキリング助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)|東京都産業労働局 雇用就業部
オンラインスキルアップ助成金
オンラインスキルアップ助成金とは、東京都内の中小企業の人材育成やキャリアアップ促進を目的とした支援制度です。以下で詳細を解説します。
東京都「オンラインスキルアップ助成金」
オンラインスキルアップ助成金とは、都内中小企業などの従業員に対して行う、eラーニング利用にともなう経費の助成制度です。例えば職務や業務に必要な知識・技能の習得、向上、資格取得のためにかかった費用の支援が受けられます。
オンラインスキルアップ助成金の対象者や申請要件、対象経費、助成額は以下の表のとおりです。
助成金対象の受講者 |
中小企業が雇用する従業員団体ならば、団体構成企業のうち、都内に本社か主たる事業所(登記された事業所)がある中小企業の従業員常時勤務する事業所の所在地が都内である者※在宅勤務中や自宅待機の場合は在宅場所を問わない |
助成金を申請できる要件 |
都内に本社か事業所(支店・営業所など)の登記がある訓練にかかる経費を従業員に負担させていない助成を受けようとする訓練について国や地方公共団体から助成を受けていない など |
助成金の対象となる経費 |
受講料(税抜価格)教育機関がeラーニングを提供する価格(料金表)を公表している、単講座または定額制の講座訓練に付随するID 登録料訓練に付随する管理料中小企業が受講状況を確認するために必要な運営料金 など |
助成額 |
小規模企業者:助成額は助成対象経費の3分の2で、上限額は27万円その他の中小企業:助成額は助成対象経費の2分の1で、上限は20万円申請はどちらも1事業者につき1回のみ |
※参考:令和4年度オンラインスキルアップ助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)|東京都産業労働局 雇用就業部
まとめ
IT人材の不足が問題視されるなか、さまざまな企業でリスキリングの重要性が増しています。公的な助成金を有効活用できれば、人材教育にかかる教育費を抑えながら、業務効率の向上や新事業のスタートなどが実現可能です。
パーソルイノベーションが提供する「TECH PLAY Academy」では、企業にあわせたオーダーメイドの研修で、リスキリングを支援しています。
未経験からでも3ヶ月で即戦力を目指せる「ITエンジニア研修」と、DXリーダーを育成する「DX人材研修」の2つを提供。どちらも企業の目的に合わせた完全オーダーメイドでの研修提供し実務での成果につなげます。
また、DXの第一線で活躍する業界著名人に研修を担当してもらうことも可能です。
外部研修を活用したリスキリングに興味のある方は、下記よりぜひお問い合わせください。
この記事を書いた人
TECH PLAY BUSINESS
パーソルイノベーション株式会社が運営するTECH PLAY。約23万人※のテクノロジー人材を会員にもつITイベント情報サービスの運営、テクノロジー関連イベントの企画立案、法人向けDX人材・エンジニア育成支援サービスです。テクノロジー人材のエンパワーメントと企業のDX化の成功をサポートします。※2023年5月時点
よく読まれている記事
\「3分でわかるTECH PLAY」資料ダウンロード/
事例を交えて独自のソリューションをご紹介します。